昔Xbox 360のデモをやって、あまりの痛々しい台詞にやる気を失わされてしまって以来。
今やっても痛々しいが耐えられるのは、出てくるネタが時間の経過でより風化したことと、私自身が老いたことだろう。
登場人物が痛々しかったり基地外なのは、オオカミ少年的な効果を狙っているようにみえる。物語の都合にあわせて、真面目な話を受け入れなかったり、逆に突拍子もないことを言い出させても違和感が少なくなることを期待しているように感じる。言動が軽率すぎたり基本的にアホなのも、物語を転ばさせるための仕掛けに感じられた。
タイムトラベルを題材にしたアドベンチャーゲームやノベルゲームというと、私にとっては「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」で、どうしてもそれと比べてしまう。
YU-NOでは、タイムトラベルの理論については説明してくれるが、それを行う装置の原理についてはオーバーテクノロジーゆえ詳細に語られることは無かった。STEINS;GATEでは、装置の原理を技術的な部分にまで踏み込んで説明しようとしてくれるのは好感が持てるところである。よく考えると細かいところは解決していなかったりするが、それについてもある程度は作中でもそのように触れられる。
逆に、説明しすぎる弊害で、その手の分野に詳しい人ならあっさりと不可能だと分かる。ほどほどに現在のテクノロジーでは説明がつかないが何故か出来る、という濁した表現を混ぜた方がよかったのかなと思う。そうすると、それをよしとしない性格である助手の存在が厄介になってしまうが。
例えば、3TB超の情報を36バイトまで圧縮するということは、ブラックホールなら確かに出来る可能性はあるだろうけれど、それはコンピュータ上で行われるアルゴリズムによる符号化ではなく、単純に電気信号なんかを超圧縮したものになる。それは36バイト=288個のビットにデータを収めるのではなく、3TB=3,298,534,883,328バイト=26,388,279,066,624個のビットを288ビットと同じ大きさに潰すものである。数値化する場合、ビット未満の情報を扱える粒度、少なくとも10^-12ビット、仮に呼ぶならピコビットの単位系が必要になる。
ところで、現在のコンピュータおよび情報伝達手段はビットが扱える情報の最小単位である。ブラックホールで3TBの情報を36バイト未満に圧縮できたとしても、ビットまでしか扱えない通信回線やX68k、携帯電話などを経由すると、その情報はビットまで切り捨てられることになる。288個のビットに圧縮ではなく捨てられてしまうのである。JPEG画像のように非可逆で元に戻せない劣化した情報の出来上がりとなる。
タイムリープは成功しない。