The Race of Arcanum

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アルカナムの地には数種の知的生命が存在しており,それらに共通する事項は,無頓着で無学な観察者にさえ明らかである.宗教によって示された迷信的な説明を受け入れることのできない近代博物学者は,本質的に異なる種族,すなわちオーク,エルフ,人間,ハーフリング,オーガ,ドワーフといった種族の間にある類似性について,別途,宗教に依らない説明を探さなくてはならない.なぜ既知の知的生命体全てが,二足で直立歩行し,手足には五本の指があり,二つの目でもって目視するのであろうか?これは全知全能の創物主の手になるものである,と信ずるなら,それはある者にとっては満足であろうし,別の説教壇を前にすれば,これとは異なった相反する説明や,別の創造に関する物語を耳にすることになるだろう.そして,これらの寓話のどれもが,われわれが日々行っている化石の研究や自然界の観察結果と一致しないのだ.生命を理解し,その歴史をひもとくことが有意であることには間違いない.

大いなる理解を期するため,私は数あるアルカナム種族について新たな分類体系の構築に着手した.この試みにおける私自身の博物学者としての所見は,多くの研究と,別の科学的研究者たちの貴重な研究データを収集することで深化された.ある現象について,科学では適切な説明ができないと思われた場合,魔法分野の専門家数名に助言を求めたこともある.これらの取り組みの結果は,間違いなく多くの人々を不快にするだろうし,これに満足する者は一人もいないだろう.信心深い人,科学を信じる人などは一様に私の血を求め,異端者として私を罵倒するだろう.そして,神秘の技を実践する者らは,私を素人呼ばわりし,自然哲学にかかわる事象についてのささいな瑕疵を指摘し,私の理論を却下するだろう.しかしそれでもなお,私の理論は不変的な観察であると主張せねばならない!もし誤りがあれば,恥知らずな人格毀損や私の理論がこれまでと相反するという理由での単なるヒステリーはやめにして,論理的な根拠や動かぬ証拠でもってその誤りをご指摘いただきたい.

まずはじめに本論文における根拠とするものについて述べると,これまで明らかになっている古生物学,民族学,近代生物学がそれに相当するが,著名な神秘の技の実践者たちの助力を,全く借りていないとは言えない.これにはツーラの応用魔術会館の魔術博士,錬金術の専門家であるワンドレイ・ライトブロウ氏に,より多くを負っている.彼はとりわけ化石の年代測定や,生体標本からある種の神秘的バイブレーションを単離するときに,貴重な助力者となってくれた.ダーンヘルム高等教育学院の名誉歴史学部長であるオライウス・ワイアーミウス氏との書簡のやりとりからも多くを学んでいる.彼には古代世界における降霊術の理論と実践に関してご教授いただいた.レイディ・エレーナ・クロイに対する満足できる感謝の言葉が見つからない.彼女はT.S.Sケブルス号での旅程において案内役を務めてくれた.彼女は私の自然や超自然の歴史に関する私の考えを最初にそして辛抱強く聞いてくれただけでなく,私の調査についてなにくれとなく力になってくれたのだ.エルフの友人,隣人,親戚に対し多くのインタビューの機会を与えてくれた.そして5月イブの朝,結婚の申し出を受けてくれた.彼女は私を最も幸せな男にしてくれたのだ.これに続く頁,それにこれからの人生の月日は,彼女に捧げる.

タラントのジョン・ベッデス



第1章 矮人種

アルカナムの知的種族の最初のグループは,矮人種と呼ばれる3種族であるところの,ドワーフとそのいとこ,ノームとハーフリングである.矮人種はその身長で簡単に見分けることができ,その身長は種族の中で最も背の高い者でも50インチ(130cm)を超えることがない.また,体のプロポーションによっても見分けることができ,人間やその親類と並んだとき,その姿は少し異なっているのがわかる.矮人種は,人間と比べたとき,その胴や四肢に比して大きな頭を持つ傾向にあり,四肢は太短い(特に足).


ドワーフ族

矮人種のなかで,ドワーフ族はまごうことなき見本である.下位のいとこたちであるハーフリングやノームとよりも大きく,物理的に強大で,寿命も長い.男性ドワーフの寿命は約600年である.身長は30インチから最大で50インチ,体重は900ストーン未満で全身これ筋肉である.病気をわずらうことはほとんどなく,他の既知種族よりも.過酷な気候,食料の欠乏などに耐えることができる体質をもつ.彼らは高度な知性を有し,文明化されていて,鋭い芸術的感覚を持っている.正確な味覚,嗅覚,聴覚は矮人種が共通して所有する能力である.ドワーフを他の矮人種を見分ける場合,顔面の毛髪が特徴的である.ノームもハーフリングもこれほどたっぷりとしたあごひげは持っていない.

ドワーフ由来の組織片を用いたわれわれの実験では,彼らは神秘的バイブレーションをほとんど全く欠いているということが示された.彼らの骨が化石年代記録における極深層に見いだされる.このことから,私はドワーフ族は魔術の成果ではなく,人類と同じような,純然たる自然淘汰の産物であると結論した.現在我々が利用できるわずかな証拠によれば,われわれ中間種と矮人種との系統分岐はおよそ200万年前に起こっている.そしてその時点から平行して進化してきた.この理由から人類と矮人種との間に子孫を残すことは不可能となっている.それが許されるほど血の結びつきが強くないのである.

自然淘汰の子らとして,ドワーフ族は,人類のように魔法に習熟する特別な才能を有しておらず,自然法則の応用にその力を求める傾向にある.彼らは生まれつき数学が得意で,設計技術,工学技術などといった数学を用いるあらゆる技術についての専門家である.ドワーフ族は採掘,精製,金属成型にも秀でており,皮革,木工,石材などの職人としての腕は,職業としては門外漢であると知られながらもたぐいまれな才能を持っている.彼らの彫刻や木工品の美しさは適切に評価されなければならないだろう.悲しいかな.非ドワーフ種族は彼らの故郷を見る機会はほとんどなく,ましてその中にある財宝など見るべくもない.ドワーフ族は苦痛や死をもって罰せられる多くの犯すことのできない法律や禁忌に縛られた閉鎖的な人々なのである.

ドワーフ族は山岳地帯に居住しており,小さな住居に住む傾向にある.彼らの生来の敵はオーガで,領土争いをしているが,ドワーフ族のほうがその知性と人数で勝っているため優位である.二者間のいかなる争いも常にドワーフ族がその勝者となる.ドワーフ社会の奇矯さは,彼らの種族に関するさまざまな俗説や誤解を呼び起こす.ドワーフの氏族らにはそれらを正そうという気もない.一部の神学者らはドワーフを「大地の子ら」とし,地殻が始動をはじめたとき,つちくれから発生したのだといっている.ドワーフが非常に古い種族であることは疑いないし,何千年にもわたって山中を故郷としてきたのも事実である.しかし,ストーンウォール山地の奥地から最近掘り出された証拠によれば,ドワーフは平地に住んでいたこともあるようだ.西の海を臨む地に地上都市を建設したようなのだ.半ば埋没した古ユールクやカームランの廃墟においては,考古学者らが超古代の陶器や鉛の像を発掘した.それらには,ドワーフが低地で狩猟や鷹狩り,魚釣りや農作する姿までが描かれていた.

いかなる災厄が,ドワーフの氏族を現在住んでいる禁断の山々においやったのであろうか?現時点で明言することは不可能である.ドワーフが未だにいだいているオークへの圧倒的嫌悪となにがしか関係があるのかもしれないが,いずれにしろ説明しがたい.彼らの際だった長命を合わせて考えなければならない.長命故,辛抱強いのだ.多くの人々がドワーフ女性が部外者に決して姿を見せないのを不思議に思っている.有名になってきている鉱山,採石場,溶鉱炉,鍛冶場で働くドワーフ女性をみることがなぜないのであろうか.知られているこれらの事実に対し,なんらかの説明をつけるために,私は別の多くの長命種族の研究を行った.そして,ドワーフのライフサイクルには,ドワーフ女性の長い出産期間が含まれているに違いないと結論した.私の見聞が示すところによれば,健康な赤子を生むために,彼らは妊娠してから10年以上を要するという.この期間,ドワーフ女性の健康は非常にリスクにさらされる.そこでドワーフは彼女を守ろうと,氏族をあげて平静な状態に置くのだ.

スティルウォーターの北にあるドワーフ居留地を訪問することによって,私はそのコミュニティにおける多くのドワーフ男性と親しくなることができた.大部分は毎日鉱山にでかけていた.そしてドワーフ女性は,高い壁と鍵のかかったドアによって,部外者の好奇の目から守られている.そこで,いつも南からもたらされる食糧を見積もることで,そこに住むドワーフ女性の数を推量することができた.その結果は驚くべきものだった.ドワーフ男性の数は,女性を2対1の割合で上回っていたのだ!

妊娠期間の長さと男性女性の比率を合わせて考えると,女性の出産世代が少ないこと,そしてドワーフたちの間で大切にされる産物が隠され全てを犠牲にしてまで守られていることは何の不思議もない.おそらくこれが,大金をつかみ取る夢を見ていないドワーフの冒険者を見ることが少ない説明にもなるのだろう.貧乏人は結婚相手としてふさわしくなるために,多くの結婚資金を集めることを望んでいるのだ!


ノーム族

ノームはドワーフやハーフリングと同じく矮人族である.彼らはドワーフから分かれて進化してきた.我々の発見したわずかな化石から判断されたところによると,ノームが初めて出現したのは70万年以上前,今で言うカンブリア紀のことである.ノームとドワーフとの種の系統分岐は,魔術的な介入ではなく,通常の自然淘汰によっておこったと考えられる.このことはノーム組織片の錬金術的テストによって論理的に確かめられている.ノーム組織片には種に特有な神秘的バイブレーションが保持されていなかった.他のすべての自然淘汰のたまものと同じように,ノーム族は魔法の習得に関し,特に優れた優位性を所有していない.彼らは魔法の使用に関しては,とくに際だって知られていない.

ドワーフ族とは異なり,ノーム族は特別に物理的な強靱さを備えたりしていない.彼らのとても低い身長からわかるように,とくに腕力が強いわけではない.ノーム族の平均身長は40インチ(100 cm)以下で,体重はせいぜい400から500ストーンである.しかし,彼らは素晴らしい耐久力と長い寿命をもっている!ノーム男性の寿命は,事故や病気がなければ500年程度である.

ノーム族は,外見上,顔や足の作りによってもほかの矮人族と見分けることができる.いとこのドワーフ族とちがって,ノーム男性のあごひげは一般的ではない.ハーフリングが持っているような特大の毛むくじゃらの足も持っていない.一般的なノームにおける体の特徴は,その大きく肉厚な鼻である.通常,ノームは他の矮人族と同様に,非常に鋭敏な感覚を持っているが,ノームの特大の鼻のおかげで嗅覚の精密性,正確性に関してはノームが一歩水をあけるかもしれない.実際この才能については誰にも負けることはない!この嗅覚は,ノームが化学者や調香師として大成していることに対するよい説明になるかもしれない.

訓練されていない観察者には微妙なものである外見上の違いに加えて,ノームと別の矮人族との違いはその性格にある.その違いははっきり明確だ!例えば,ドワーフ族がおおむね排他的な山岳地帯をすみかとするのに対し,ノーム族はある特定の場所に定住することがない.彼らは商取引の存在するところにならどこででも見受けられる.ドワーフ族が閉鎖的で偏狭な生活をおくり,可能な限り他種族との接触を避ける一方,ノーム族は世界を自由に歩き回る世界主義者である.ハーフリング族は恥ずかしがりやで内気,概して定住性の種族である.ノーム族は非常にエネルギッシュであり,何かに駆り立てられている.全ての矮人種の中で,ノーム族は最も旅行を好む種族で,新たな言語を学び,目新しい異質な経験に貧欲である.

多くのノームを銀行家,政治家,産業リーダーにならさせしめた世界的にも名高いノームの野心の核となっているもの,それは安全保障に対する強い欲求である.物事を表面的にしか判断しない傾向にある外部の観察者にとって,ノーム族の金や権力に対する愛着は,しばしば非難の対象となる.しかし,そうすることによってノームの富を求める動機というものを無視してしまっている.ノーム族は自らの利益のために金や権力を愛しているのではない!平均的なノームは己自身や家族に対する安全保障を求める心が富を求める動機となっているのだ.

地位や未来を剥奪された単なるノームは,非常に脆弱な一個人であるという事実に気づかねばならない.ノーム族はドワーフ族のように物理的に自分で自分をうまく守ることができないし,身を隠すための踏破不能の山岳地帯も所有していない.ノームが心に平和を感じることがあるとするならば,自分とその愛する者たちがそれなりによりどころとなるものを所持していなければならないのだ.危険に充ち満ちた世界と自分との間に障壁を設けねばならない.性急な判断を下す前に,ノームが100年分もの年金を積み立てていることを覚えておくことが賢明なのかもしれない.

また,ドワーフ族が氏族に対し献身と義務を果たすのに対し,ノーム族は家族の繁栄に忠実である.そのノームの忠誠心は決定的で絶対である.兄弟,両親,祖父母,そのほか存命中の先祖たち,いとこ,義理のいとこ,そしてその家族,ノームは100名以上におよぶつながりのある人々に対し,その者たちの健康と冨の責を負っていると思われる.この重くのしかかる重圧にも彼らは耐えることができる.当然である.なぜなら,彼の家族の一員それぞれが彼と同じように家族を支えるため,莫大なエネルギーでもって一生懸命に働くからだ.これらの努力の全ては,同じ家名を冠するノーム全てを統括する家長によって采配される.それぞれが果たすべき責任や義務が振り分けられるのである.

ノームの家族に対する愛情は,彼らに生きる目的や生きる方向性を与えている.それは安全保障と同じように他の種族にとっては妬みの種にしかならない.まれにノームの家長に認められ家族の「ゴッドサン」として迎えられる部外者もいるが,その者が楽しめる利益といったら!しかし,これらには悪い面もある.醜い権力争いが生じるだけでなく,ノームは家族に対する脅威には非常に厳しく,血の復讐を行うことでも知られているのだ.ノームほど根に持つものはいない!彼らは長命であり,うらみについては事細かに覚えている.過ちを犯した者に対しては,その子孫に対してにさえ100年でも200年でも忘れることはないのである.

ノームの家族は,女子供をことのほか大事にする.ノーム族の女性はドワーフ族の場合と異なり閉じこめられてはいないが,それでも屈強な護衛やボディーガードを連れていたりしないかぎり,海外を旅していたり,通りを歩いているのを見ることはまれである.訓練を積んだハーフオーガの警備員が大都市の通りにいるのはよくみられる光景だが,彼らはノームの財産を守るために存在するのである.


ハーフリング族

ハーフリングはアルカナムで最も小柄な人々であり,矮人種の中でも最も小さい種族である.平均的なハーフリングの身長は34インチ(85センチ)を超えることはなく,通常はそれよりも低い.平均的な体重は4から500ストーンだが,ときには700ストーンを超えるものもいる.彼らは大食いという悪徳を持つ傾向にあるのだ.彼らは他の矮人種と同様に鋭い感覚を持っているが,味覚については図抜けている.この才能により,多くのハーフリングは,自分自身と他人の楽しみとして,味覚を楽しむことに人生の多くを費やしている.世界の有名シェフのほとんどはハーフリングである.彼らはわれわれに最上のワイン,ビール,サイダーをも提供してくれる.

ハーフリング族は一見するだけで,いくつかの特徴によって彼らの近縁種と区別することができる.彼らはドワーフ族よりも物理的に小さい.濃いあごひげを生やすことがないが,体の他の部分は動物のような柔らかい体毛におおわれており,特に足の毛が濃い.ノームのような大きく肉質な鼻は持たず,普通のノームの半分くらいの大きさしかない.最も目立つ特徴は彼らの足で,それらは通常不釣り合いなほど大きく,たいがい非常に毛深い.ハーフリングの足の裏の皮膚は分厚く柔軟性があるため,足取りは軽やかである.通常,彼らは靴は履かない.どたどたするし,窮屈だからである.

外見上の違いはあるが,ハーフリング族と他の矮人種との間の形而上学的な違いはより深いものがある.純粋な自然淘汰から生み出されたドワーフ族やノーム族とは異なり,ハーフリング族の進化経路は魔法による影響を受けている.このことは今日のハーフリングから得られた被験組織サンプルに対する適切な錬金術的実験によって示すことができる.蒸留工程によってそれ以外全てのバイブレーションが取り除かれたハーフリングの骨や組織片は,ある特定の神秘的周波数と共鳴することが認められるのである.これは本人が死亡した後も長く継続するため,われわれは5万年前のハーフリングが残した種族特異的な共鳴によって,その時の確かな日付を知ることができる.

最初のハーフリングが出現したのは20万年の昔,グリマリングの森のちょうど南にあたるなだらかな丘陵地帯においてである.彼らの祖先はノーム族であったようだが,超自然淘汰の例に漏れず,それが確かなことであるのか絶対視はできない.魔法的作用が彼らをノーム族から分岐させたのかもしれないが,なんともいえないし,その作用がどのような目的で最初のハーフリングを創造したのかも知り得ない.魔法が働いた最終的な結果として,ノーム族やドワーフ族が500-600年の寿命を享受するのに対し,ハーフリングは400年と寿命が縮められている.ノーム族やドワーフ族との物理的な違いや,ハーフリング族の特性に関するユニークな側面についても同様な理由で説明できる.

内在的な魔法的共鳴を所有しているにもかかわらず,ハーフリング族が魔術師になる傾向はとくに大きくない.彼らの魔術的特性は,種族と自然の深いつながりのなかで,彼らが家庭菜園や家畜を好むというもっと微妙なかたちで現れる.ハーフリングの大多数は田舎で暮らしており,偉大なる野心よりも,素朴さや家庭での静かな生活を楽しんでいる.彼らは農家やワイン醸造業者として大成している.ハーフリング族の気質はおだやかで我慢強く,ノーム族やドワーフ族よりも受動的である.彼らは快適さと平和を愛し,他の種族と悶着をおこすことを好まない.どのような職業を選ぶにしても,彼らは緑のある静かな場所に引き寄せられる.町中に住むハーフリングもできる限り庭を持つ必要性を感じている.町のハーフリングの庭にはさまざまなハーブ類,花々,ミツバチの巣箱,野菜畑などが備え付けられている.

ハーフリング族は小さく結束の強い共同体に暮らす傾向にある.田舎のハーフリング族は村々に集まって芝生や花々におおわれた盛り土の下に住居を構える.芝生や花々は防音壁となり彼らの住居をより快適にする.冬に温かく夏は涼しい.町中に住むハーフリングの場合,その共同体はさらにちいさなものになるが,それぞれが独自の習慣や伝統を固守する傾向にあるものの共同体同士の結びつきはより友好的である.

ドワーフ族やノーム族に比べてハーフリング族の女性は自由闊達に動き回っている.妻を部屋に閉じこめることを夢見るハーフリングはいない!女性がそれにがまんするとは思えない.その小ささにもかかわらず,ハーフリング女性は活発でずけずけものを言うのだ.彼女らがしばしば夫と一緒に畑仕事していたり,そのほかの仕事を一緒にしているのをみることがある.ときには彼女ら自身の所有する農場や事業を経営していることもある.しかし,絶対的な必要に迫られないかぎり,彼女らが地元を離れることはない.旅行を楽しむハーフリング男性も少ないが,女性はもっと少ない.彼らを国外でみることはまれである.


第2章 巨人種

オーガは超古代の最後の生き残りであり,発生してからおよそ100万年が経過している.ごく最近になって薄れはじめてはいるが,魔法的潜在力を有している.化石による記録によれば,現在からおよそ90万年前,狂気じみた魔力活動があったことが観測される.千年後のアルカナムの生命に影響を与えるほどの類を見ない魔力のうねりである.この突然の超自然的大変動の嵐による淘汰がなぜ起こったのか,確かなところはわかりようがない.今言えるのは,そのときの魔力作用はとほうもなく巨大で,今日の魔術師たちが行使しうる力とは比べものにならないほどであったということだけだ.頭数は少ないが,その時,多種の生命体が創造され,今日まで生き延びている.

この大昔の魔力の時代において,我々は多くの伝説的な種族の発生を見ることができる.クラーケン,ヒドラ,シーサーペント,ワイアーム,竜,ドレイクなどはおよそこの時期に現れている.それ以前に存在したユニコーンや炎鳥といった多くの種族は本質的に変容させられた.他にもセントールやマンティコアのようにキメラ生命体として融合したものもある.その理由についてはわかっていない.人類はこの時代から20万年前に発生していたため,この大変動に巻き込まれた.われわれの先祖の大部分は変容しなかったが,一部は魔法によって重度に変換させられた.幻想的な超自然による淘汰の旋風がおさまった4千年後,それまではただの人類であった存在の中から,新たな種族が2つ台頭してきた.エルフと巨人族である.

真性の巨人はもはや存在しない.だが,われわれはそれが存在していたことを知っている.その地を旅するとき気をつけていれば,今もダークフェンズ(闇の湿原)では,彼らが配置した巨石群をみることができる. モービハンの「巨人の踊り」には毎年訪問客がある.真夏の太陽に輝いてそびえる石柱群を見物するためだ.巨人たちの化石も出土している.タラントの自然歴史博物館では,一組か二組の巨大な骨格が組上がっているのをみることができる.しかしアルカナムの巨人たちは骨以上のものを残しており,それは現在もわれわれの間に存在する.巨人の末裔たるオーガと半オーガがそれである.


オーガ族

古代巨人族から今日のオーガ族が発生してからどれだけの時間が経過したのか確かなところはわかっていない.確かなことは,その変化の過程は何千年をもかけてゆっくり行われたのだということである.20万年の世代交代によって徐々に小型化していったとみるのがおそらく妥当であろう.おそらくは,彼らに食料を供していた他の巨大種が着実に減少していったせいだろう.最初の近代オーガがいつ現れたのかについて正確なところはわからない.完璧な証拠となる痕跡はほとんど見出されていないのである.オーガはオークと同じように,同族の死体を食べる風潮がある.そうはいっても博物学者は近代オーガが出現してから5万年以上は経過していないのではないかという見方をしているのが大半である.

今日の平均的なオーガは,150インチ(380センチメートル)程度の身長を持つに過ぎない.これはかつての巨人族にはとおく及ばないものである.巨人族は大腿骨だけでもそれだけの長さを有していたのだ.オーガの体重はおおよそ3,000ストーンで全身筋肉のかたまりである.彼らの寿命を定めるのは難しい.オーガは多くの種族から大きな敵意をもたれており,遭遇するやすぐに殺されてしまうことが多いためである.ただ私が調べた遺体の平均年齢は200年であった.実際の寿命については確かなことは言えない.私の調べた遺体は暴力によって死亡した個体ばかりだったのである.

野生のオーガは孤立した生き物のように見える.彼らは可能な限り山岳地帯に住居するのを好み,非常に縄張り意識が強い.このことはしばしばドワーフ族とのいさかいの種になる.ドワーフ族もまた山岳地帯に住むことを好むからだが,オーガ族はその隣人によって首を切り飛ばされ,蹂躙されようとも気にかけない!オーガは外観からしてドワーフとの戦いの際に優位さをもっているように思えるが,ドワーフがオーガによって殺されることはほとんどない.そしてその逆の場合であるのが常なのである.オーガにはドワーフよりも巨体であり,腕力とリーチで勝るというアドバンテージがあるが,ドワーフは油断して単独でオーガと遭遇するはめに陥ることはめったにない.通常,ドワーフはオーガがその地域にいることをすばやく察知する.オーガは自分のなわばりの目印となるものに対してあまり注意を払わないのだ.オーガは深い谷に岩を積み重ねたり,乱暴に引き抜いた木々で住処を作る傾向にある.このような目印をみつけたドワーフは直ちに狩猟部隊を組織する.そしてオーガらが立ち向かってこようとも,逃げ出そうとしようとも,迅速に彼らを殺戮してしまうのである.

自然歴史学の観点からすると,非常に奇妙なことなのだが,オーガはストーンウォール山岳地帯や灰色山脈の峰々の優先的所有権を主張しているようである.これらの地域からはほとんど例外なく,彼らの祖先である巨人族の化石が見出されている.いまだに小さなオーガの家族がこの地域で孤立した生活を送っているのがしばしば見られる.ならずものの男性オーガが半端者のオーク部族を支配していることもある.そのとびぬけた腕力で権力を手にしているのだ.オーガは高度な知性を持たず,とくに文明化されているわけでもないが,彼らは少なくとも数語の共通語と彼ら自身の言語を話すことができる.彼らは頭の回転が遅い傾向にあるので,祖先である巨人族が所有していた魔法に対する適性は持たない.このことは彼らがエルフを特に嫌悪する説明の一部になるのだろう.エルフはオーガと同じ時代を黎明期として持つのに,エルフらは魔法的才能を一切失っていないのだ.

オーガは魔法に対し才能を持たないが,同様に自然法則を応用することもできないようだ.彼らの用いる唯一の道具は,粗雑な棍棒や石斧である.狩猟の方法も単純である.その方法は,注意深く選んだ隠れ場所,すなわち山岳地帯の渓流や狭い小道の陰から不意に飛び出し,獲物の頭蓋を凶悪な一撃で打ち砕くというものだ.

巨人族と比べて比較的小さいオーガが,どうして古代の偉大な存在である巨人族とのつながりがあると確信できるのか,と疑問視する声も一部にある.そこでわれわれは,錬金術的手法を用いて,オーガと巨人族の関連性について示すことにした.すると,先祖の巨大な骨から見出されたのと同じ,深くゆっくりとした突き刺すようなバイブレーションが,近代オーガの組織片から見出されたのである.このバイブレーションは,オーガから見出されたもののほうが,巨人の化石から見出されたものよりもかすかなものであった.このことは,かつてアルカナムの巨人族に力をもたらした魔力がついに死に絶えてしまったことを意味するのではないだろうか.そして,その子孫はより人間のほうに近づいてきたということだ.このことは,祖先である巨人族は人間と混血することはできなかったが,オーガはできる事実についての説明となるかもしれない.


 

半オーガ

半オーガはどういったわけかオーガと人間の交配の結果で生じた奇妙な雑種である.これらの生き物がどのように生まれてきたのか確かなことは言えないが,強姦による懐妊の結果であるには違いない.半オーガが生まれでた環境を想像するのは困難である.今日,アルカナムの全ての市街の通りを彼らが歩いているのを見なければ,大方の博物学者たちは,かくのごとき現象は起こりえないことだと言うだろう.もちろんオスのオーガが人間女性を捕らえて,乱暴という凶行に及ぶことは十分に考えられるが,オーガたちの言い分からわれわれが知りえていることは,そのような性的経験から犠牲者が生き残るということは通常考えられないということだ.また,一部の人間女性が,たまたまその強姦を生き延びることができたとしても,父親となるオスのオーガが自分の子供である半オーガの誕生するまで,我慢するとは到底考えられないのである.すなわち,人間女性を蹂躙してひとたび欲求を満足しても,オスのオーガの常としては,またすぐに次の欲望を満たそうとすると思われるのである.露骨にいうならば,犠牲者は殺されて食べられてしまうと想像されるということだ.オーガに行為におよばれてしまった人間女性の大部分は,このある種の開放をおそらく歓迎することだろう!

このようなおぞましい推測はあるにしても,半オーガは現に存在し,われわれの間に生活している.今から200年ほど前,半オーガは非常に珍しい存在だった.だが,ここ数年におけるオーガ族絶滅の危機が,現世代のオーガ族長たちを鼓舞したのかもしれない.すなわち前代未聞の繁殖計画を立てたさせるにいたったのである.確かなことは言えない.彼らに聞いてみることは不可能だからである.われわれにできる最善の策は,彼らの子供らを調査することであり,その知見をもとになんらかの結論を導き出すことである.

半オーガは両親からの形質を非常にはっきりと示す.体格は純血のオーガに比べるとわずかに小さく,平均身長はおおよそ120インチ(300センチ)である.体重は2500~3000ストーンで,オーガ族と同じように筋肉質で,恐ろしく腕力が強い.オーガほどの長い寿命は持たず,90年ほどしかない.同様に,性格のほうも人間側の血を受け継いでいる.半オーガはオーガ族よりもはるかに高い知性を持っており,オーガのように粗暴ではく,発作的に激怒する傾向にもない.彼らは別種族とも協調して働き,生活することができる.ノーム族に雇われていることが多い.ノーム族はほかのどの種族よりも偏見を捨て去ることができる種族なのだ.半オーガには,オーガ族や巨人族に内在するのと同じ神秘的バイブレーションのかすかな痕跡が認められるが,魔法に対する素養や性向はまったく持たない.サイズが適切である場合であれば,道具や技術的な機器を用いることはおそらくできるだろう.しかし半オーガの大きすぎる手や体に合わせて作られているような道具はあまり存在しない.

われわれの周囲で見かける半オーガの全てが男性である事実は奇妙なことではある.それは,人間-オーガの両親が,娘の生存を許そうとしないためなのかもしれない.また,半オーガの息子は部族から離れることが許可されている一方で,娘は繁殖目的のために部族にとどめ置かれているのだとする不気味な記述もある.いずれにしても,文明社会のなかでの生きるすべを見出した半オーガは,世界のどこでもそのやり方を押し通すことができ,雇い主もすぐさま見出すことができる.彼らは非常にすぐれたボディーガードや用心棒,肉体労働者になることができる.ノーム族は彼らの奉仕の恩恵を多分に受けており,財産家のノーム紳士が個人的ボディーガードとしての半オーガと一緒に旅をしているのを目にすることもある.半オーガのボディーガードの強固な忠誠心は,もはや伝説的ですらある.事が起これば,半オーガは対象を守るために死ぬまで戦うだろう.

半オーガは平均的な人間よりよりもいくぶん頭の回転が鈍い面もあるが,非常に我慢強く,温和な気質である.彼らはドワーフ族やエルフ族に対し,オーガの遺伝形質からくる嫌悪感を持っているが,その感情は反感や不信といった形で表出し,反射的な暴力におよぶことはない.また,彼らは保護者的本能を持っているようにも思われる.半オーガは自分より小さい者に対し,真の愛情を持っている.半オーガは全ての種族の子供らに優しく接するが,ことのほかノーム族やハーフリング族の子供を好む傾向にある.こういったことの理由について確かなことはいえない.しかし,半オーガの護衛が,小さな子供や数人の子供の護衛の任についているという不釣合いな光景はしばしば見られるのである.


 

第3章 中間種

オーク,エルフ,人類およびこれらの混血種が中間種に分類される.これは自然と超自然における淘汰における私の理論で,常にもっとも抵抗される部分である.私は本件に関し幻想は一切抱いていない.われわれの文明の大多数によって論破されない真実と見なされる仮説群と同じく,宗教的ビリーフに捕らわれてはいない.私の同輩は自然や超自然の歴史の徒であるが,私は科学の人である.証拠で判断し,希望的観測は排除されなければならない.

しかるに超自然淘汰で生じた人類の直系の子孫であるオークやエルフをすべて中間種と位置づけるのは苦痛な務めではある.だが近年蓄積されている証拠によれば,古生物科学や法的錬金術の技を通じて,この事実は疑いようのないものになっている.

このような意見は,これまでの体系をすべて再配置するもので,数え切れない宗教による教義と相反するものである.神秘的な「元素」と種族を結びつけるのを好む者らは,自分らの理論が化石記録によって支持されないことを知って不機嫌になるだろう.人類の起源に関して寛容な学のある読者でさえ,われわれがオークとエルフを同じように調査するとき,たじろくことがある.もっとも受け入れるのが難しい根拠はこれである.すなわち,近縁関係がなければ2つの生命体は子孫を残すことができないという事実である.全ての博物学者や農業従事者はこのことを知っているが,われわれはそのおなじ根拠を受け入れることを渋る.自分らに関わってくる場合は!平均的なエルフ,オーク,人間にこの真実を受け入れさせるのはほとんど不可能である.すなわち,半エルフ,半オークの存在は,それらの種族がおたがいにいとこ同士であるという事実を.さらにいえば,半エルフも半オークもどちらも,その純血種より,繁殖力旺盛で生命力あふれる混血種である.このことはその両親の種族の関係は非常に近しいものであることを示しているのだ!


 

オーク族

宗教上においても,科学上においても,オーク族は「怪物」種族に分類される傾向があり,オーガ族との関連性が仮定されている.それは,両種族が似たような特性を有しているからであるが,まず最初に指摘しておくべきことは,そのような仮定的関連性はいっさい存在しないということである.このことは,オーガ族が「超自然淘汰」から生まれた種族であることからも支持されている.一方,オーク族は人類の系統樹から分岐した種族なのであって,最新の分析結果によれば,最も直近の「超自然淘汰」でオーガにまで退行していった巨人族に比べると,非常に若い種族であるということである.オーク族は,物理的にはオーガ族に類似しているが,科学的な見地からすると,それは偶然の一致に過ぎないのである.

最初のオークが現れた時期について述べるのは困難である.われわれは完全に無傷の遺骨というものをほとんど発見することができていないのだ.というのも,オークらは仲間の遺体というものを埋葬するよりは食べてしまう傾向にあるからである.だがそれにもかかわらず,われわれはダークフェンズ地方において,オーク族が存在を始めたのはここ数千年,最大でも1万年程度のことでしかないのではないかという痕跡を見出しつつある.彼らは若い種族である.彼らは比較的最近の,非常に強力な魔法の力によって生じたのである.そして,彼らの祖先はまったくの人類であったという事実は,純血の人類の大部分がオーク族に対して感じる,いくつかの深い本能的な嫌悪に対する解釈となる.

平均的なオークの身長は60~70インチ(165センチ)だが,実際に彼らがその背丈で直立していることはほどんどない.オークの背骨はゆがんでいる傾向にあり,その結果,彼らはせむしで,傾斜した肩,額の突き出した頭などを持つことが多い.そのため見た目の背丈はじっさいより低く見える.体重は700から1,200ストーンで人類と同じだが,二つの種が似ているのはこの部分だけである.オークの顔面の造形はねじくれており,あたかも人間の戯画のようでもあり,しばしば野生のイノシシやトラのほうに類似した風貌を有する場合がある.また,とがった耳,大きなきば,豚のような鼻,猫めいた瞳孔の目など変異を持つこともあり,大きく裂けた口,あるいはいわゆる「オーク口」などの欠陥をもつ傾向にある.歯も人間の標準とは異なっており,鋭かったり,ぎざぎざしていることが多く,歯を失う場合があってもすぐに新たな歯が生えてくる.つまりサメと似た性質を備えているのである.

オークの寿命は短く,40年ほどである.しかし,旺盛な繁殖力を持ち,女性のオークは4ヶ月ごとに子孫を残すことができる.その子は6ヶ月以内に歩くことや走るようになり,人間の幼児よりも成人に達するのが早い.さらにオークの新生児は,人間の場合よりも同時に生まれる数が多く,双子や三つ子で生まれるのが普通である.だが,オークの母親は二本の腕と二つの乳房しか持たないために,三つ子のうちの三番目の子供は,通常父親のオークに引き渡される.その新生児は多産の儀式の様式に従い,父親に食べられてしまうのである.

その寿命の短さにもかかわらず,オーク族は恐ろしいほどのバイタリティを有している.強大な腕力を持ち,体の大きさは人間と同じであることを勘案すると,かなり大きな力を備えている.また,傷を負ってしまったとき,その傷は直ちに治癒されていく.四肢あるいは個々の指が切断されてしまった場合,その体から切り離された部分は,数分間程度の間は生きているものと思われる.腕や足全体が切断されてしまった場合でも,適切な手術を受けて体に縫い付けることができれば,再度接合することがかなうのである.また,疾病に対する高い抵抗力を有しており,壊疽のような感染症のたぐいには完全な免疫を持っている.さらに人間よりも,酷暑あるいは極寒による苦痛を感じにくい.この強固な身体は,数千年前,オーク族が人類から分岐した際の,魔法的な働きの一側面によるもののように見える.オーク族の頑健な体格についての報告は,古代文書においても多く示されている.

オーク族は,1部族あたり30から40名からなる大きな部族を組織する.男性が支配する社会であり,最も強く,最も狡猾な男性が部族を率いている.その他の男性は狩猟や女性たちの保護を共同して行うが,いずれにしても酋長の決定に逆らうようなことはしない.ただしそれは,酋長に直接挑戦するというつもりがない場合においてである.オーク族の酋長は,いつ何時でも,自らの支配権に対する挑戦に直面する心積もりをしておく必要がある.気を抜くといつでも若く力の強いオークに取って代わられる恐れがあるのである.その地位を狙うのは,別の種族の者である場合もある.オーガ族がオーク部族を率いる場合があることが知られている.半オーク,あるいは堕落した人間が支配的な地位についている場合すらある.その有名なものとしては,ソウニービーンのカッタン・カニバルが知られている.

生来,オーク族は遊牧民的な生活を送る種族であり,場所から場所へつねに移動している.世界の孤絶した場所や居住地区の辺縁部では,彼らはいつも危険にさらされている.オークの部族は,文明化された人々の人口密度が低い地域であればどこにでも存在する.オークのキャラクターは大きな二つの原動力を持っている.すなわち恐怖と憎悪である.彼らはほとんど全ての生き物を憎んでいる.とりわけ他の知的生命を憎んでいる.そして,なんらかのかたちで彼らより強い力を持つもの,すなわち彼らを殺す力を持つものすべてを恐れている.オークの恐怖は,尊敬と崇敬に転化される.そして,憎悪はおそかれはやかれ-たいがいはすぐさま-常に暴力と殺人に転化される.

オーク組織片に対する錬金術的試験の結果によれば,彼らの骨肉には力強い神秘的バイブレーションが編みこまれていることが示された.もし,かの種族が,最も粗野な動物以上の狡猾さを所有しているのであれば,彼らは恐るべき魔術師になりうるはずである.この考えはわれわれの大部分を恐怖で満たすであろう!だが幸いなことに,オーク族は生来,高度な知性に恵まれていない.彼らの寿命を縮め,体を捻じ曲げているのと同じ魔法が,脳においても同様に作用している.そのため彼らの脳の思考領域の大部分は,憎悪と怒りに占有されてしまっているのである.

もちろん,オーク族の頑健さと低い知性は,日雇い労働者として比類なき適性を持っている.彼らの一部は,タラントのような産業都市の貧民として生活することを許されいる.工場は働く意思をもつ彼らにその機会を与えている.オーク族はより文明化された種族に憎悪されているにもかかわらず,こういった種類の仕事を捜し求めている.彼らはどのような種類のテクノロジーにも抗しがたく引き寄せられているかに見えるが,彼らは自然法則を大きく理解しているようには見えない.明らかにオーク族は自ら作り出すことのできない道具や機械を好ましく思っている.彼らはとりわけ火器類を好むが,しかし,オーク族にそのような武器を販売するような非道徳的な商人はほどんどいないのも事実である!


 

半オーク

半オークはオークと純血種の人間の交配の結果生じた,混血の種族である.通常は人間の母親とオークの父親の組み合わせによる強姦によって成立するものであるが,まれなケースとして,オーク女性と人間男性との和姦の場合もある.半オークは半オーク同士で結婚し,子供を作ることもできる.いずれにしても,オーク族と人類の血液の混合は,通常,おおかたの人間にとって大きな嫌悪の対象となるため,その結果生まれた子供たちも,嫌悪と憎しみの目で見られてしまう.

半オークの物理的な外見は非常に多様である.半オークの大まかな体格はほぼ人間と同じであり,背丈は65から80インチ(175センチ),体重は700から1,200ストーン程度である.通常,オーク側の親が持つ異常である背骨のゆがみはほとんど受け継がれることはなく,がっしりした背筋の伸びたオークのような外見になる傾向にある.オークに比べると,若干体毛が少なく,歯もわずかに小さいが,もちろんそれが絶対的な法則というわけではない.一部には人間と区別の付かない半オークも存在する.そういった個体はオークの遺伝形質をわずかしか示さない.専門的な観察者であれば,人間の標準より体毛が少し多いだとか,鼻が上を向いているだとか,爪が厚くとがっているだとか,犬歯が例外的に大きいなどから判断できるであろう.しかし,そのしるしを見出すのは非常に困難である.ときおり,もっとも近しい人々にすら何年間も気づかれずに「やり過ごす」半オークもいる.

ただ残念なことに,まったくの人間顔というのは半オークでは一般的ではない.よく言われるのは,もっともハンサムな半オークでさえ,疑いようのないオーク的外見をいくらか持っているということである.このことは,人間社会で生きることを選んだ彼らの人生に,ある種の烙印を押している.単純労働以外の職についている半オークをみることはほとんどない.その職業は,地方の農業共同体の小作人であることが多いが,都市部においては,ゴミ収集,煙突掃除,くず拾い,炭鉱仕事,工場仕事といったもっともみすぼらしい職についていることがほとんどである.一方,半オークは,オーク部族のヒエラルキーのなかでは高位に昇ることがよくあり,そんな彼らは人間社会を徹底して避ける.彼らは純血のオークよりもはるかに知性的であり,部族を生き延びさせる環境について,明敏な思考を行うことができるのである.

一般的な半オークの性格については論じるのが困難である.オーク族は家族というもの自体について深くは考えないが,半オークの子供たちについても差別をすることはない.半オークはその外見にもかかわらず,腕力や狡知によって,いくぶんかの尊敬を受けているのである.一方,人間たちは半オークを家族に迎え入れることはほとんどしないか,あるいは人間と気持ちよく付き合えるようになるために,十分な処置を強いる.半オークに対する人間社会の不寛容は,彼らの人生に対する見方を,永続的に決定付けてしまう.生まれたときから人間として扱われた彼らが,オーク的な性向を超越する能力があるのかどうか知ることは不可能である.ともかくも,今みられる半オークは粗野で,打算的,執念深く暴力に走る傾向にある,というのが現状ではある.そしてそれは,通常彼らが成長するときに与えられる環境を勘案すれば,驚くべきことではないのである.

一部の半オークは,彼らを悩ますオーク的な粗暴な気質をコントロールするすべを学ぶことができる.生来の知性と,本質的に魔法的な種族であることに由来する若干のアドバンテージとの組み合わせは,事情が許すならば,それは彼らの「魔法職人」としての適性となる場合がある.また,自然法則の働きを把握することもできることので,機会が与えられるのであれば「技術者」になることもできる.ただ,そのような機会が与えられることはほとんどない.高度な教育に接すること自体がまれなのだ.全ての文明世界の住人は彼らを差別し,彼らの知的能力に対し低い評価をくだすことがほとんどなのである.寿命である60年程度のうちに,半オークは大きな仕事をやり遂げることがある.山賊として名をはせる者もいる.彼らに人生を与えた純血の人間たちよりもよほど人間らしさを示す者もいる.半オークはかみそりの上でバランスをとるようにして生まれた.そして彼らは圧迫されているがゆえに邪悪の道に落ち込みやすいことは,誰の目にも明らかなのである.


 

エルフ族

エルフ種の起源についての私の理論は,様々な方面において大きな反対に遭遇するだろう.たしかに今までは,エルフ族は他のどんな種族よりも古い種族であるという知識が一般的であった.しかし,化石分析から得られた証拠によれば,この結論は支持されないのである.そしてアルカナムでもっとも古い種族は人類とドワーフ族であり,そのすぐあとに続くのが,エルフ族であり,巨人族ということなのである.最初の典型的なエルフが現れてきたのは約900,000年前,魔法大変動時代のさなかのことだ.エルフ族は巨人族や竜族,その他多くの魔法的種族と同じ超自然淘汰の産物なのである.

最初の典型的エルフは「おぼれ森」地域にその痕跡を残しており,この地における同じ地層からは,かの有名なエルトドン・ワイアームの化石も一緒に見つかっている.古生物学者のジョン・エルトドンは,この古代怪物ののこぎり状の歯列の間に,ミスリル製のくさりかたびらや甲冑の断片を発見した.これらの鎧は,当時のエルフ戦士の間で特有のものである.これらの化石は750,000年以上昔のもので,エルフ文明は,このときすでに相当発展していたのだと結論することができるのである.

エルフ族は,体のプロポーション,顔の造形,髪,目,皮膚の色によって,他の中間種種族と区別することができる.エルフ族は人間よりも背が高くなく,平均約60インチ(150センチ)で,華奢でほっそりした外見をしており,体重は600ストーン以下である.人間と比べたとき,胴体に比して長い手足を持ち,指やつま先は非常に長くほっそりしている.長くとがった耳を持ち,アーモンド形の目をしており,ちいさく繊細な鼻と口を持っている.皮膚の色は白色からクリーム色のベージュ,チョークホワイト,繊細なミルキーオリーブといった範囲の色合いである.髪の色も明るい系の色で,シルバーからコーンシルクゴールド,グリーンといった色合いとなっている.まれな場合では,あざやかな燃えるような赤の髪や,コールブラックの色の髪をもつ種も存在する.エルフたちはこのふたつの髪の色を非常に魅力的と思っているようで,その髪の色の持ち主が人間であっても惹きつけられてしまうかもしれない.エルフ族の目の色は,シルバーホワイト,ブルー,グリーン,グレイ,アンバーイエローである.そしてその色は彼らの気分によってさまざまに変化し,感情の違いによって移り変わるのである.しかし,目の色がエルフの目の第一の特徴ではない.彼らの視界は並外れており,暗闇で見ることができ,とても遠くのものまでも見ることができる.このことは,彼らを中間種の中で最も素晴らしい射手にせしめているのである.

エルフ族は本質的に魔法的な民族である.彼らの組織片における普遍的振動数の神秘的バイブレーションは,強力すぎるあまり,単離するのが非常に困難であるが,蒸留という工程を用いることによって得ることができる.エルフ族は魔法的エネルギーの飽和状態にあるので,生まれながらにして「魔法の技」に対する熟練者である.そのため彼らは,アルカナムにおいて数え切れないほどの世代にわたって魔術師であり続けたのである.一方,エルフ族は「自然法則」に係わる研究にはまったく才能を示さず,ごく単純なテクノロジーを習得するのにも非常に手間取ってしまう.内在する魔術があまりに強大であるために,彼らが存在するというだけで小型のテクノロジー装置はまったく動作しないということも起こりうる.そして大型で強力なテクノロジー装置についてはさらに危険なことを発生せしめることにもなりかねない.いずれにしても,テクノロジーは大部分のエルフにとって興味を引くものではない.むしろ「発展」の名において行われる自然に対する収奪として非難の対象となるのである.

人間にとってエルフ族のキャラクターを理解するのは困難である.矛盾が混合した性質を示すからである.彼らは概して平和的で温和な種族である.楽天的でさまざまなジョークや悪ふざけを好む...しかし,名誉に関してもきわめて深刻に考えるため,人間から見るとたいして意味のないようなことでも侮辱的だとして怒り,死を賭した決闘にまでいたってしまうこともある.エルフ族は宴会,祭り,休日を愛し,式典のたぐいに多くの時間を割く.エルフは人間が言うところのいわゆる「仕事」に就き,誰かに雇われるということはほとんどまれである.エルフ族がほかの種族に対して非難していること,それは彼らがお金の心配をすることや,実直に生きることであって,エルフに言わせればそれは「つまらない時間の無駄」なのだ!エルフ族は気前がよく魅力的,寛大で礼儀正しいホストなのだが,ときおり,彼らの尊大さはまったくもって鼻持ちならないときもある.彼らはあからさまに自らの種族が他よりも優れていると見なしており,自己愛がはなはだしいようなのである.

エルフ族は多くの事柄について哲学的である.そして,古風なエルフの尊大さは他の種族たちの嫌悪感を誘う.この嫌悪感がいわゆる「憎悪」にまで昇華することはまれである.ただし機会があればエルフに殺されてしまうオーク族,エルフから野蛮なウドの大木の典型と見なされて蔑視されているオーガ族についてはそのかぎりではない.エルフ族と人間らとの間で交わされた議会において,エルフ族はそれらの話題については言葉少なであり,国外にいるエルフは非常に若い傾向にあるのだということを人間族は理解していない,と言うにとどめている.エルフ族の人生の最初の数世紀,子供のエルフは少々放埓である.彼らは新たな体験を求めてさまよい歩くが,この時期がエルフがもっとも人類との関係を持つ時期である.そして若いエルフの男女は人類の間に「道楽で種を撒く」のである.成熟したエルフは身を固め,閉じこもるようになる傾向にある.短命種族である人間の友人や配偶者を埋葬するという体験が,人間との関係を倦まさせる原因となっているのかもしれない.

「うるわしの民」は非常に排他的であり,地域ごとにグループを形成する.すなわち,グリマリングの森のエルフたちは,自らを灰色山脈のエルフとは別の血統であると考えている.エルフたちは全て「自然」,とりわけ自分の生まれた森に親しんでおり,深い霊的な交わりを持っていることが,そのことに対する幾分かの説明になる.一部の観察者は,エルフ族が動物の言葉をしゃべって,けものに命令を与えたのを見たことがある,と主張している.きこりの斧によって木々が切り倒されるとき,その木々の叫びがエルフには聞こえるのだと断言する者もいる.その真偽はともかく,エルフ族は生きとし生けるもの全てに大きな愛情と尊敬を示す.みずからのハンターや射手としてのスキルに誇りを抱いているにもかかわらずである.エルフの狩人は必要がある場合や自己防衛の場合のみに殺すのであって,けっしてたわむれに殺すことはない.それなのに,わざわざ戦利品を求めて国外にくりだすこともあるのである.

エルフの寿命の長さについて,最終的な結論を導くのは不可能である.ただ,われわれがなし得た見積もりの中で最良のものとしては,魔法によって寿命を延ばすことをしなければ,エルフの寿命は1,000年程度であろうということである.しかし,魔法を容易に使いこなすエルフ族が,みずから死を望むことは非常にまれである!単純な「意志力」のみで,数世紀にわたる若さと寿命を保持することができるのだから.こういう状況であるゆえに,エルフに,とりわけ女性エルフに,年齢を尋ねるのは無粋というものだ.見た目は17歳にも満たないエルフのメイドが,五世代の人間が塵に帰っていくのを見送っているのかもしれないのである.エルフの町を訪ねる機会があれば,他のエルフのまねをするのがベストである.通常エルフは相手のエルフの年齢を自動的に感じ取っている.それに応じて応対をつかいわけるのである.二人の同郷で,ほぼ同年齢エルフが出会った場合,彼らはお互いを「ブラザー」あるいは「シスター」と呼びあう.違う地域出身の者どおしだった場合は「いとこ」,数世紀年上の者に対しては,こびへつらうつもりがない場合は「マザー」あるいは「ファーザー」である.千年を超えるエルフは「アンティー」あるいは「アンクル」であり,これには愛情と尊敬がこめられている.真に古いエルフは「グランドファーザー」あるいは「グランドマザー」と呼ばれる.私はキンタラの銀色のレディの列席を賜ったことがあるが,そのときは,古老のエルフたちですら,彼女のことを「エルダー」と呼んでいた.これは想像をはるかに超える年齢を表しているのだろうが,明言することはできない.


人類

人類は,全ての中間種の起源であり,アルカナムでは最も古い住人のひとつである.また,われわれは純然たる自然淘汰の申し子でもある.化石による証拠がはっきりと示しているのは,われわれの先祖と初期のドワーフ族は約200万年前にお互いに分化していったのだということである.そしてそのとき以来,二つの血脈は平行して進化してきたのだ.ドワーフ族が全ての矮人種の祖先であるように,人類はそのほかのアルカナム上の知的種族全ての根元である.これには大昔の分派であるエルフ族,巨人族,オークとして知られる近代的な亜種なども含まれる.

この仮説はいくぶん受け入れるのが困難である.しかし,これは,無視することのできない要因群について唯一説明可能な仮説なのである.われわれの古生物学者プリーマスは,人類が,アルカナム上で現在の姿になってから100万年以上たっていることを立証している.第二に,純血の人類と,古代人類の化石の両方から得られた組織片からは,いずれも特徴的な神秘的バイブレーションは検出されなかった.このことはわれら人類は本質的に魔法的ではないということを示している.人類は内在的な魔力を全く有していないのだが,ほかの3つ異種族,すなわちエルフ,オーク,オーガと完全な混血種を生み出すことができる.しかし,その3種族間での交配はできない.これらのことと,人類がほかの3種族のどれよりも早く現れてきたという地質学的年代の事実と組み合わせて考えたとき,人類が「超自然淘汰」-超自然淘汰は最初の人間が現れてきてからかなりあとに発生したのだ-として知られるプロセスによって創造された他の種族らの先駆者であるという事実が明確になってくる.エルフ族,巨人族,オーク族はすべて,魔法的な働きかけにより,時間をかけて人類から派生してきたのである.

標準的な人間の背丈は60から75インチ(175センチ)で,体重は600から1,200ストーンである.平均寿命は約80年だが,幸運なものは100年以上生きる者もいる.これ以上生きるには魔術にたよらなければならない.生まれつきの内在的な魔力には欠いているが,ときおり「魔法の技」をマスターし,魔法技師としてそこそこの成功を収める人間もいる.一方,生まれつきの高度な知性と,旺盛な好奇心は,「自然法則」を応用する能力にすばらしく寄与している.人類は既知のどの種族よりもテクノロジーを発展させ,これを制御することができる.

人間種族の性格は多種多様である.血縁者をベースにしたグループを形成する傾向にあり,兄弟や子供に対して非常に大きな愛情を示す.アルカナムにおいては抜きん出て数に勝る種族であり,あらゆる地域地方に住み,どこででも見ることができる.人類は考えうるあらゆる職業に従事し,そのために自らをどれだけ適応させていかなければならないのだとしても,専門性や環境による垣根を許容させない頑固さを持っている.オークに対する理不尽で激しい憎悪を除けば,生まれながらの偏見も持たないようだ.オークに対しては純然たる本能から忌まわしさを感じてしまうのである.公平に言えば,おおかたの人間はオーガ族に対しても明確な恐怖と憎悪を見せるのも事実であるが...それと同じような恐怖や憎悪は,人間の肉をごちそうと考える存在に対してなら,何に対してでもでも感じられる感情であろう.


 

半エルフ

半エルフは人間とエルフを両親に持つ混血種である.半エルフの定義に関して,一般的な決まり事のようなものはなく,エルフ女性と人間男性との間の性交によって生まれたり,あるいは人間女性にエルフ男性が手をつけることによって生まれることもある.どのような結合の結果であれ,半エルフは両種族の遺伝形質の一部をそれぞれ受け継ぐが,そのどちらの種族に属することもない.これは混血種族すべてにあてはまる宿命でもある.

半エルフは物理的な体格を人間の親から受け継ぐ傾向にあるが,必ずしもそうであるとは限らない.背丈は60から75インチの間で,体重は600から1,100ストーンである.ときおり完全な人間,あるいは完全なエルフのようにみえる者もいるが,訓練された観察者にかかれば,どちらの種族にも一般的ではない,両者の混じり合った外見によって見分けがついてしまう.背が低い半エルフでも,通常は人間と同じプロポーションをしており,エルフ特有の長い手足や指という特徴を欠いていることが多い.エルフの親と同じとがった耳を持つことが多く,典型的なエルフと同じ肌の色をしていることも多いが,髪の毛にはしばしば人間由来の形質が混ざることがしばしばである.

半エルフは人間やエルフの社会において厳しく差別されるということはないが,どちらの社会においても半エルフは気楽に過ごすということはできない.エルフの間で暮らす場合,純血の親戚たちは半エルフに「ブラザー」や「シスター」と呼びかけることはほとんどない.エルフ親と近しい者であってさえもそうなのである.そのかわり半エルフは「いとこ」と呼ばれる.この呼び名は,完全には歓迎できないよそ者,という強いニュアンスを含んでおり,それが実際のところなのである.人間の間では,半エルフは他の種族の者と同じように自由に生き方を選ぶことができるが,彼らの長命が,永続する愛情を構築する際の障害となっている.半エルフは400年以上の寿命を持つのである.

半エルフの性格は,彼らの生い立ち,あるいはエルフと人間のどちらの社会で主に成長してきたのかということに非常に左右される.半エルフには,エルフの属性である,生命との深い結びつき,というものを欠いてはいるが,「自然」に対して親しみを感じてはいるようである.しばしば動物たちに対し愛情を示し,戸外で時を過ごすことも多いのである.彼らはエルフのもう一つの属性である尊大さを示すことはない.そしてエルフのもつもうひとつの属性,すなわち他種族への偏見をみせることも非常にまれである.ただし例外的に,純血のオークに対しては本能的な嫌悪を持っており,それはエルフや人間と同様である.

半エルフたちはエルフ親と関連して,同様に内在的な魔法の才能を示すが,程度においては親に劣っている.魔術の技を学ぶことを選んだ半エルフは,非常に素晴らしい魔術師になれる.また,エルフが不得手とする「自然法則」を習得することも自由自在ではあるが,テクノロジストになるには不利な点に気づく場合が多々ある.だが生徒が適切なモチベーションをもっているのであれば,それは集中力と猛勉強とでたやすく克服できる.どんな場合でも,彼らは彼らの望む専門家になれる.種族に対してまったく偏見を持たない彼らは,すぐれた法廷弁護士,トレーダー,小売商などになる.また,非常に多くの半エルフがいなか地方でも暮らしており,農夫や牛飼い,狩人として暮らしを立てている.エルフから受け継いだするどい目と射撃技術によって,半エルフの狩人やガイドには,高い評価が与えられている.