Gods

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アルカナムの多神教の神々

思うにアルカナムとその住人の発展は,それぞれの宗教の勃興を通じて解読しうると言える.時代を通じ,歴史上われわれを熱烈に駆り立て啓発した高位権力は,切なる信仰を有していた.どうしてそれが真相でないわけがあろうか.われわれの知性と情熱が,われわれとその野蛮な片割れとを分かつものではないとでもいうのか.我々の求めた神々の意味とは,先を見通すための,あるいは日常の偶発的な出来事に理由付けをするためにわれわれの定めたものだ.どんなものであれ,われわれの渇望と存在パターンを反映したものにすぎない.

本書「アルカナムの多神教の神々」では,しばしば「伝説の時代」とも呼ばれる年代より前の年代において,アルカナムの様々な種族によって崇拝された様々な宗教について詳細なる記述を試みた.パナリー教が台頭し,文明化された種族の大部分に受け入れられ広まるにつれ,異教の宗教群の重要性は急速に薄れていった.私は,その神々とその崇拝者らを記述することによって,過去のことのみならず,われわれにとっての来るべき日が明らかにされることを望みたい.魔法的生命体にとっても,テクノロジーの申し子にとっても,過去を学ぶということは最高の教訓だということを忘れてはならない.

しばしば私自身の宗教信条はどうなのかと問われることがある.それについて私はこう述べるのみである.私は古き神々を広範に研究し,その寺院群を歴訪した.未だ手つかずで残る祭壇に奉納をしたこともある.私が見た限り,古代の信条は決していい加減なものではなかったと全て真実性をもって言うことができる.

タラント大学 宗教学教授 アルドウス・T・ブクシントン


下位神

私は異教の神々をふたつに分類した.すなわち,下位神と上位神である.下位神については,アルカナムのさまざまな種族により特化した議論を行い,後述される上位伸を理解する手助けをしたいと思う.既知の知覚種族にはそれぞれ下位神が存在する.それらは常にその種族の独自性を秘めた徳を具象化している.

下位神はさらに3つのグループに細分化される.すなわち,「崇高」,「中立」,「暗黒」である.この用語は私独自のもので,描写される神の一般的な特質に基づいている.


崇高の神々

ター’エル,エルフ族の知識の神

実存主義の時代が到来する以前,エルフの民は自然神を崇拝する神秘主義者がほとんどだった.自然神の中でもっとも強大なのは,後に知識を体現するようになった樹木の神ター’エルであった.ター’エルは聾唖の神で,秋風にそよぐ枯葉を通してのみ話すことができた.春のにわか雨はその嘆きの涙,冬の嵐はとどろく裁定であるとか.以前はお供えはその年に収穫される最上の果物が奉納されていたが,いつしか奉納物は,リ’タニすなわち「魂の家」と呼ばれる小さな木像に変わっていった.この木像には所有者の真の霊的実体が込められていると言われる.

リ’タニは一年に一度,ター’エルの祭壇の炎の中に投げ込まれ,燃え尽きて灰になる.それによって,エルフの民は,自らの不浄さや狭量さといったものが全て,ター’エルによって浄化されたと考えるのである.新しいリ’タニはエルフのシャーマンから与えられる.そしてまた新しい一年が始まるのだ.


ゲシュティアンナ,人類の愛の女神

ゲシュティアンナは,歴史が記録されるようになって以来,人類の異教崇拝における中心的存在であった.人類の神話によれば,ゲシュティアンナはとても美しい定命の女性だったのだが,月と太陽によって神にされたのだという.月と太陽は,自分たちが下界よりも見劣りしていることに耐えられなかったため,彼女を天上界に呼び寄せたのだ,とされる.人類が信じるところによれば,ゲシュティアンナはたそがれどきに人々に笑いかけるのだという.つまり日が沈み,月が昇る時間帯である.また,春は彼女の愛と美が現れる時期なのだという.つまり冬と長く暑い夏の日々の間である.女神に奉納する祭りは,酒と音楽とさまざまな儀式で盛大なものになる.

ゲシュティアンナの祭壇に奉納されるのは,通常は「情熱草の根」である.この根は媚薬になると考えられているが,祭においてしばしば用いられることがある.

   

中立の神々

アルベリク,ドワーフ族の石神

ドワーフの宗教について知られていることは少ないが,ドワーフは哲学については長い伝統を持っており,大いに思弁を行っている.600年前のドワーフ間氏族戦争は,哲学的信条の論争から発展した可能性が大いにあるのだが,それはともかく,古代のドワーフの神アルベリクは,ドワーフ族の伝承において常に重きを置かれていた存在である.ドワーフ族のもっとも古い神話によると,アルカナムはアルベリクの背骨の上に横たわっているのであって,ドワーフはそこに住む特権を得たアルベリクの最初の子供たちなのだという.アルベリクは最も古き存在で,容易に怒らない者,深く考える者,よく働く者を愛する.彼は山脈を揺らし,火山を噴火させることで子供たちに歌を歌い,地中深き洞穴の静かな空気の中にささやくのだとか.

ドワーフ族は,アルベリクの祭壇に溶岩石の塊を捧げる.溶岩はアルベリクの怒りを表わし恐れるべきものだが,子供たちとすべてうまくいっているということで,冷えて軽い岩石となったとされるのである.


マカール,ベドカーン族の狩猟の神

ベドカーン族はよく知られていない種族だ.トカゲめいた生き物で,遊牧民として移動する生活をしている.ベドカーン族は1000年にわたってダークフェンズの湿地帯に住み続けている.16世紀の著名なノームの冒険家であるワレン・プリントン卿だけが,彼らの風習についての実話を残している.以下は卿の著書「ダークフェンズにおける動植物と種族」からの抜粋である.

「私は,粘液まみれの鱗に覆われた,これまででもっとも独特な生き物を発見した.彼らは自らをベドカーンと称していた.明らかに,彼らは私が呼ぶところの「文明種族」つまりノーム族だとかそういった種族とは接触したことがないようだった.文明の起こりにもっとも必要となる言語に相当するものは持っていたが,一方では,まったくもって粗暴で残虐であるように見えた.彼らの素朴な宗教は,彼らの呼ぶところの「蛇の父たち」という神々を中心に展開されていた.そのうちのひとりが狩猟の神マカールである.日々の食料の調達に出かける前,ベドカーン族の戦士たちはマカールの祭壇の前にひざまづき,彼らが「心臓の石」と呼ぶちいさな物体を捧げる.その物体は荒削りのダイアモンドか水晶のようにみえる.彼らがどこでそれを入手しているのかは,これから明らかにするつもりだ.

ベドカーン族の戦士たちはこのマカールへの捧げもので,獲物を狩るときのすばやさが与えてもらえると信じている.まことにもって原始的な人々である.」


一本腕のボロ,ハーフリング族の盗人の神

ハーフリング族は常に策略を好んできた.ゆえに彼らがもっとも重要とした太古の神が,盗人の神,一本腕のボロであったことはべつだん驚くには値しない.ボロはその狡猾なやり方で知られている.そして貴重なもの,美しいもののすべてを愛している.伝説が語るところによれば,盗みの技を誇るあまり,ボロは義父にあたる嵐の神プロゴの影を盗んだのだという.しかし,不注意からプロゴに見つかってしまい,罰として片腕を切り落とされてしまったのだとか.ボロが仕返しに義父の魂を盗んで二つに引き裂いてしまったのでプロゴは死んでしまった.稲妻はプロゴの巧みな切断技術を,そして雷鳴はプロゴの断末魔を象徴すると伝えられる.

ハーフリングはかつてボロの祭壇に指輪を捧げた.指輪は,ボロが不注意から支払うことになった代価のことを,そしてボロの残された腕にも技術は残っていたことをハーフリングらに思い出させるのだという.


ケルリン,ノーム族の黄金の神

ノーム族の歴史は,古代の信仰,伝統などを固く秘密にしてきた.しかし,ノームの家庭を訪ねてみれば,彼らの宗教の伝統のひとつは暴露されるだろう.つまり黄金像だとか黄金神ケルリンのような像などを見つけることになるのだ.ケルリンはノーム族の万神殿の中でもっとも古参の神で,そのほかすべての神々は彼の手のひらから湧き出てきた存在なのだとか.彼が世界に在れと歌ったのであり,その声が凝り固まって金と銀の大きな鉱脈になったのだという.

ケルリンはその言葉で作られた金銀だけを欲した.ゆえにノームの奉納物は通常お金,それもムヌラと呼ばれるノームの小さな古銭なのである.


 

暗黒の神々

シャカール,オーク族の戦神

シャカールは古代の神であり,「伝説の時代」よりも前からオークの部族らによって崇拝されていた.羊の頭と4本の腕,サソリの尾を持つという恐ろしい姿をしている.長年にわたって,オークたちは自分の最初の子供をシャカールに捧げていた.シャカールは最初のものと最上のものを要求するのだ.オークの伝承によれば,シャカールは,オーク族が心底戦争好きだということを知ったとき,生け贄に対する考えを変えて,以来最上の武器のみを捧げものとして受け入れるようになったのだという.伝統的に,その捧げものは骨の柄のついたナイフや剣である.骨はシャカールの大きな角を表わし,鍛えられたはがねはシャカールの意志の力を表わすのである.

ときおり偏歴の冒険者が古代オーク部族の廃墟を探索することがあるが,きまっていつも,そのような骨の柄の付いた武器を見つけることになる.オーク族は自らの神に対し非常に神妙であった.それで,神の残虐性を忘れないためにそのような武器を携帯したのである.


トルグ,オーガ族の心臓の神

オーガの神トルグはいまだに原始的なオーガ部族によって崇拝されている.「伝説の時代」を生き延びオーガとして最初に神性を得た存在である.オーガ族の伝承によれば,トルグは多くの子供たちを持つ父親であった.はるか昔,オーガの民はさまざまな神々によって統治されていた.時が過ぎ,トルグは自分の子供らがオーガであるということの意味を忘れ去ってしまったのに気づき,子供たちを全て殺してしまった.それから,子供たちの体からまだ脈打っている心臓を引き出し,それを喰らったことで子供らが持っていた中の最高の五体を手に入れることができたのだという.そして残ったむくろは海に投げ入れてしまったと伝えられる.

トルグはオーガの心臓の神として知られる.毎年,いまだにこの神を崇拝しているオーガ部族の者たちは,神に敬意を表して狩りで捕まえた雄鹿の心臓を喰らう.雄鹿の体は,トルグが最後の子供を悼んだ場所である西の海に投げ込まれる.そして神の力と知恵をたたえるのである.


 

上位神

上位神はアルカナムの既知種族全てにとって共通であるらしいことは大変興味深い.種族や宗派によって名前やつづりに若干の違いはあるものの,それら強大な存在に対する一般的信条はどれも一緒である. 上位神は4体しかおらず,巨大な哲学的宗教的概念を具現化しているかに見える.


ハルショーン,真実の神

異教の宗教の全ては,絶対善という観念を持っており,善なるハルショーンは全ての善を象徴している.ハルショーンは真実の神として最も知られており,光の神ヘリオンと太陽の間に生まれた息子である.ハルショーンは未知のつまらない邪悪なもの全てから光をそぎ取ったと言われる.ハルショーンは天空の神であり,占星術師や透視能力者は彼に祈り,兆しと星々から彼の智恵を求めるのである.

ハルショーンへの捧げものは通常オリーブの木の枝,それもモービハンの森の破壊の光の中で見つけるのが最も困難なものが用いられる.


モーリンダル,影の神

悪とは宗教に欠くべからざる一部である.影の神モーリンダルは,ある意味アルカナムの多神教群全ての対となる面を象徴しているといえる.モーリンダルは月と光の神ヘリオンの間に生まれた私生児である.父親殺しは常にモーリンダルと結びつけられる.伝説によれば,かつて昼と夜の両方はヘリオンによって統べられていた.しかし,モーリンダルが父ヘリオンを殺したので,夜は彼と彼の母のものになったのだという.そうして夜,とりわけ冬の夜はモーリンダルの王国となったのである.

モーリンダルを崇拝する秘密カルトや宗教は多く存在したが,われわれは彼らが実践していることについてはほとんど知らない.そしてそのほうがよいのだろう.われわれが知っていることといえば,彼らは彼らの暗黒神に捧げるために,バンゲリアンディープからもたらした黒ダイアモンドを用いると言うことだ.黒ダイアモンドは純潔の消失と影の勝利を象徴している.


カイ’タン,均衡の女神

カイ’タンは月と太陽との間に生まれた娘で,ハルショーンとモーリンダルとは異父妹にあたる.カイ’タンは詐欺師であり狡猾な女神なので,感情的なふたりの異父兄弟に彼女の手練手管を発揮することで,お互いが永遠に相争うよう仕向けている.そして彼らがお互いを非難しあうのを見て笑い転げるのだという.

彼女の崇拝者はほとんどが盗人や役者である.一方で彼女は祈りを捧げる者の決定に対する指針と判断を与える.彼女の狡猾な知識を求めてくるのは,敵や悪党と渡り合っている人々である.カイ’タンはありとあらゆる事象を知り,またその価値を知っていると言われる.彼女がいつも微笑んでいるのは,この世に価値のあるものなどほとんどないからなのである.

通常,カイ’タンの崇拝者たちは彼女に晶洞石を捧げる.晶洞石はこの世界の美と悪を象徴している.


ヴェロリエン,万物の父

異教の神々全ては,少なくともヴェロリエン,すなわち「万物の父」を知っている.彼に言及している文献はごくごくまれであるが,全ての宗教が全てを見通し,また全てを創造した神のことを口にしている.「万物の父」を言及している一節はただ2つが知られるのみで,2節とも約3千年前のエルフの神秘主義者メッゼリンによる著書「十二能天使の書」において記されている.2つ目については後述するが,最初の一節はこうである.

「・・・そして「驚異の都」の民は「万物の父」に大いなる捧げものをした.彼は人々を祝福し,彼らに力を与えた.人々はかつて人の目が見たことのないものを作り出した・・・」

もしヴェロリエンに何か捧げものがなされたのだとしても,あるいは,彼が捧げものとして何を望んだにしても,それが何なのかはわからない.